肺がん死亡減少をめざして〜ひとりひとりができること
主催 | 日本CT検診学会 |
共催 | 信濃毎日新聞社 |
日時 | 2012年2月18日(土) 13:30〜15:50 |
会場 | メルパルク長野 大ホール |
参加費 | 無料(要事前申込) |
定員 | 700名 |
プログラム
座長 | 楠 洋子 先生(阪和インテリジェント医療センター) |
座長 | 飯島 裕一 先生(信濃毎日新聞社) |
禁煙の重要性について
高橋 裕子 先生(奈良女子大学大学院保健管理センター)
肺がんCT検診について
丸山 雄一郎 先生(JA長野小諸厚生総合病院放射線科)
胸部CT検診による発がんリスクについて
島田 義也 先生(放射線医学総合研究所)
松本市の肺がんCT検診の取り組み
須澤 博一 先生(須澤内科小児科医院院長・前松本市医師会会長)
講演概要
禁煙の重要性について
高橋 裕子 先生(奈良女子大学大学院保健管理センター)
喫煙はCOPDや肺がんをはじめとして全身に影響を及ぼします。また周囲に対しても受動喫煙を生じることで健康被害を及ぼしてしまいます。肺がんの予防にCT検診と並んで重要になるのが禁煙です。
しかしながら禁煙は容易でない人が大勢います。近年、科学的根拠に基づく禁煙方法が編み出され、ニコチンパッチやバレニクリン(内服薬)などの禁煙補助薬が入手しやすくなって禁煙は様変わりしました。なかでもバレニクリンは脳内のニコチン受容体と結合してニコチンの結合を妨げると同時に少量のドパミンを放出することで禁煙に伴う離脱症状やタバコに対する欲求を軽減して禁煙しやすくしてくれます。
禁煙治療の目覚ましい発展によって、禁煙の開始は従来に比べて容易な作業となりましたが、禁煙を継続するのはまた別の難しさがあります。家族のサポート、メールサポートや職場や地域でのサポートなどをうまく利用して禁煙の継続を図ることも大事なポイントです。
禁煙の成果は健康面にとどまらず、人間関係の改善や意欲的な生活にもつながります。禁煙のもたらすポジテイブな面に着眼して禁煙を続け、肺ガンを予防していただきたいと思います。
肺がんCT検診について
丸山 雄一郎 先生(JA長野小諸厚生総合病院放射線科)
肺がん死亡を減少させるためには、禁煙と肺がん検診が大変重要であり、各自治体を中心に、胸部単純X線写真(以下単純写真)と喀痰細胞診による肺がん検診が施行されています。10年ほど前から、肺がん検診にCT検査を利用することで、単純写真による検診よりも早期の肺がんが多く見つかることがわかってきました。2010年には、米国の大規模な臨床研究で、低線量の胸部CT検診のほうが、単純写真の肺がん検診よりも明らかに肺がん死亡率を低下させることが証明され、低線量CT検診は、肺がん死亡を減少させる優れた検診方法として、今、世界中で脚光を浴びています。
長野県は全国でも積極的にCT検診が実施されている自治体の一つであり、77市町村のうち、2/3にあたる49市町村で肺がん検診にCT検査を取り入れ、これまでに約7万人の方がCT検診を受診されています。発見された肺がんの9割以上が早期肺がんであり、多くの方が治癒されています。
最近のCT装置の進歩は目覚しく、非常に少ない放射線被曝線量でCT検査を受けられるようになりました。一般に胸部CT検査の被曝線量は6.9mSv程ですが、検診目的の胸部CTは0.5〜4mSv程で撮影しています。また、最新の装置では、単純写真を1枚撮影する際の0.05mSvよりも低い0.03mSvで、全肺を0.6mmという薄さで約500断面、撮影することが可能となり、単純写真よりも少ない被曝でCT検査を受けられるようになってきました。
少ない被曝で、かつ高画質のCT検診が普及することで、不利益が少ない肺がん検診を受けて頂けるようになります。低線量肺がんCT検診の最新情報を市民の皆様に知って頂き、肺がんにならない、肺がんで亡くならないようにするために、自分自身で何ができるのか、何をすればいいのかをお考え頂く機会としたいと思います。
胸部CT検診による発がんリスクについて
島田 義也 先生(放射線医学総合研究所)
がん死亡率トップである肺がんを減らすために、胸部検診では従来の胸部X線写真に加え、CTによる検診もすでに全国的に始まっている。一方、わが国のCT検査数では年間約4500万件と国際的にも1,2位を争うほど多く、放射線診療による被ばく総線量は年々高くなっている。それに伴い、社会的にその発がんリスクが徐々に問題視されてきている。CT検診は高リスク群の疾病、例えば、喫煙者の肺がんなどに有効と期待されてきた。近年、米国で5万人規模のランダム化比較試験の結果が報告され、その内容はCT検診の受診により肺がんの死亡率は年間20%減少するというものであった。また、「東京から肺がんをなくす会」のデータ解析からも、我が国においてもCT肺がん検診の有効性が示唆されている。発がんリスクの線量依存性、分割照射による効果、年齢依存性、装置による線量の低減化技術の進歩などを紹介しながら、胸部CT検診の今後について、リスクとベネフィットの観点から議論する。
松本市の肺がんCT検診の取り組み
須澤 博一 先生(須澤内科小児科医院院長・前松本市医師会会長)
松本市は1)結核・肺がん集団検診(検診車による胸部間接X-P検査)、2)肺がん窓口検診(胸部X-P検査+喀痰検査)、3)肺がんCT検診(CT検診車と一部施設検診)を並行して実施している。
平成18年度から長野県健康づくり事業団のCT検診車で、40歳以上の希望する市民4,000人を対象に検診補助制度を使い、主としてCT検診車と一部施設検診を導入した。放射線専門医と呼吸器専門医他が二重読影を行い、要精検者は精密医療機関で精密CT検査、気管支鏡検査で確定診断を行っている。平成21年までの4年間で、受診者12,047人から原発性肺がん65人、がん発見率0.54%、82%が早期がんであった。肺がんCT検診は間接X線読影方式に比べ、がん発見率は8.4倍であり加治可能な症例が多かった。今後も肺がんCT検診の普及を図ってゆきたい。