会長挨拶

第19回日本CT検診学会学術集会大会長 丸山 雄一郎

第21回日本CT検診学会学術集会大会長
千葉大学大学院医学研究院 先端化学療法学
滝口 裕一

第21回日本CT検診学会学術集会を平成26年2月14日〜15日、京葉銀行文化プラザ(千葉市中央区)にて開催させていただくことになり、大変光栄に存じております。この機会を与えていただいた会員・学会関係の皆様に厚く御礼申し上げます。

2011年には米国のランダム化比較試験により、低線量CT検診による肺がん死亡率の低下が初めて報告されました。米国発のエビデンスとはいえ、日本で行われた数多くの先行研究における方法論や知見の集積なしには成しえなかった成果です。本学術集会が今回で21回目を迎えることを思うと、今から20年以上も前に肺がんCT検診の研究を始め、本学会を創設した日本の先駆的研究者たちの先見の明とたゆまぬ努力に改めて畏敬の念を抱かざるをえません。

あらゆる医療行為には利益と不利益が共存し、CT検診も例外でないことが示されつつあります。今後さらに精力的な取組が期待される低線量CTによる肺がん検診実施にあたっても、安全で精度の高い有効な検診を提供する一方、受診者には検診の利益だけでなく不利益、および限界についても十分な説明をすることが求められています。一方、利益を最大化し、不利益を最小化するための努力・研究も求められます。研究で得られたエビデンスを日本での実臨床に応用するにはさまざまな課題がある一方、ここにこそ検診効果を向上させる大きなチャンスが与えられたとも考えられます。日本独自の研究にも大きな期待が寄せられます。大変地道な研究ですが、検出された結節の取扱いを最適化することは死亡減少効果を増強し、過剰診断のデメリットを緩和することにもつながると期待されます。

このような観点から、今回の学術集会でも低線量CTによる肺がん検診を推進する上での課題を整理し、その対策について包括的に検討していけるものと期待しております。1)日本での課題と対策、2)結節の取扱いについては2つのシンポジウムを計画しております。国民は幅広い健康増進を望んでいます。低線量CT検診でわかるのは早期肺がんだけでなく、COPDの指標の一つともなる肺気腫性病変、循環器病変なども含まれます。せっかく放射線を使って撮像した情報を肺がん以外の健康増進対策に役立てる取組もますます重要になると思われますし、また健康を希求する受診者と接する医療者はタバコ対策を含めさまざまな生活習慣の改善についてアドバイスする機会にも恵まれています。さらにゲノム医学の飛躍的技術革新はその成果を身近な健康増進に役立てる機会を与えつつあり、検診対象者ひとりひとりのリスク評価による検診の個別化にも期待が持たれるなど、検診に携わるものもこれに無関心ではいられなくなりました。

会場は東京駅から総武線快速で38分のJR千葉駅すぐそばです。日頃の研究成果を持ち寄り、みんなで国民の健康増進のためにご討論下さるようお願い致します。またこうした取組の一端を社会にもご紹介すべく市民公開講座も開催いたします。第21回学術集会に全国からたくさんのご参加を心よりお待ちしております。